漁師町の肉まみれラーメン 竹岡式ラーメン (トップ写真) 千葉県富津市竹岡地区は、伝統的な釣法、生きたエビを使ったマダイのしゃくり釣りなどで知られる風光明媚な漁師町だ。この漁師町の名を冠するラーメンが竹岡式ラーメンだ。場所柄、魚介のだしを生かしたラーメンかというとさにあらず。山盛りのチャーシューが特徴の、しかも、だしではなく湯を使ったスープも特徴のご当地ラーメンだ。 (写真:「梅乃家」手前は国道127号線) 竹岡式ラーメンを代表する人気店が「梅乃屋」。木更津から海沿いに南房総の館山に至る国道127号線に面した、古びた小さなお店だ。しかし、開店時間前から大行列ができる竹岡を代表する人気店だ。 (写真:「梅乃家」のチャーシューメン) その最大の特徴は肉、チャーシュー。しかもボリューム満点。普通にラーメンを頼んでも、そのチャーシューの量は、一般の店のチャーシューメンを凌駕するほど。チャーシューメンを頼めば、丼の表面はチャーシューで覆われ、麺が見えないほど。 (写真:チャーシューメンに薬味をのせて) しかも、麺の量、スープの量も、丼からあふれるほど…いや、実際にあふれた状態で提供される。客席にどんぶりを運ぶトレーには、真っ黒なスープがこぼれている。 (写真:麺は袋めんのような四角い乾麺をゆでたもの) 調理法もユニークだ。とんこつや鶏ガラ、魚介、合わせだしなど、だしをアピールするラーメン店は多いが、竹岡式ラーメンはだしではなく湯を使う。大量に煮込んだチャーシューの煮汁を湯で割ってスープにするのだ。しょうゆに溶け出した肉のうまみが味の決め手になる。 (写真:どうしてこんなに小さい鍋で?) さらに麺は乾麺を使用。どうしてこんなに小さい鍋で?と感じるほどのボウルのような鍋で麺をゆでる。しかもボウルに山盛り。鍋の上に飛び出した麺はどうゆで上がるのか不思議にさえ思うほど。さらに、使うのは七輪だ。もちろんガスがないわけではなく、チャーシューはガスコンロで調理する。七輪でないと「梅乃家の麺」にはゆで上がらないそうだ。 (写真:別添えの「薬味(玉ねぎ)」) スープは漆黒と呼びたいほどの黒さだが、その色ほどにしょうゆからくはない。さらにユニークなのは、薬味に長ネギではなくタマネギを使う点だ。50円を追加して「薬味(玉ねぎ)」を注文すると、茶碗いっぱいのタマネギのみじん切りが添えられる。これをラーメンに乗せるのだが、そもそもあふれているスープが、タマネギの質量分、さらに丼からあふれ出る。多くの点で、ラーメンの常識を超えたラーメンだ。 (写真:「梅乃家」と人気を二分する「鈴屋」) 「梅乃家」と人気を二分するのが「鈴屋」。「梅乃家」から国道127号線を北上した、やはりロードサイドに位置する。歴史は「梅乃家」より古く、竹岡式ラーメンの元祖とも呼ばれている。 (写真:「鈴屋」のチャーシューメン、ネギ山盛り) 真っ黒いお湯で割ったスープは同様だが、最大の違いは、薬味のネギが長ネギである点。チャーシュメンを頼むと、その量は「梅乃家」の「薬味(玉ねぎ)」に匹敵するボリューム。とはいえ、全体的には「梅乃家」に比べオーソドックス感は強い。 (写真:チャーシューは長ネギの下に潜む) スープの黒さもやや控えめ。ボリューム満点のチャーシューは、山盛りの長ネギとメンマの下に隠れている。添えられたナルトも「これはラーメンです」と主張するかのようだ。 (写真:オーソドックス感のある「鈴屋」のラーメン) チャーシューメンではなく、ラーメンを頼むと、さらにオーソドックス感が強まる。長ネギを散らしたスープに浮かぶナルトと海苔は、東京のしょうゆラーメンにも似たビジュアルだ。 (写真:品切れで明るいうちに営業終了) 人気は「鈴屋」も同様で、昼時が過ぎると、品切れで店を閉めてしまうことも多い。竹岡を代表する2店だが、共通点がありながらも、それぞれに個性を持つ。食べ比べには向かないボリュームだが、竹岡式ラーメンを知るには、どちらも一度は食べてみるのがいいだろう。