ソース味のラーメン しょうゆ、みそ、塩があるなら… (トップ写真) 東京のラーメンといえば鶏ガラスープにしょうゆ味、札幌なら濃厚なみそ味、九州は塩とんこつのスープが一般的だ。しょうゆ、みそ、塩と来れば、ソース味のラーメンはないのか、と思うのだが、全国に点在するしょうゆ、みそ、塩に比べ、ソース味のラーメンは極端に少ない。 (写真:船橋の老舗「大輦」のソースらーめん) 万国共通の塩は別として、しょうゆやみそは日本古来の調味料だが、ソースはイギリスウスターシャー州の中心都市ウスターで誕生したという説が一般的だ。外来の調味料とすれば、中国料理を源流にしながらも日本で独自に進化したラーメンという料理にあまり使われないのは当然と言えば当然だ。 (写真:食卓には必須の調味料の一つ) しかし、日本のソースは中濃やとんかつなど、ラーメン同様、日本国内で昇華した調味料でもある。食堂や居酒屋では、しょうゆや塩と並んで、みそ以上におなじみのテーブル調味料だ。ソース味の汁麺が食べられていても不思議ではない。 (写真:「阿修羅」の船橋ソースラーメン イギリス系のソースを効かせて現代風に) 「ソースラーメン」を名乗る希有な存在は、千葉県船橋市のご当地ラーメンとして知られる船橋ソースラーメン。戦後、京成船橋駅そばにあった「花蝶」という店で誕生したといわれるが、すでに店はなく、詳細は分からない。「花蝶」閉店後も周辺の店で提供され続け、21世紀になってからソースラーメンを再興するプロジェクトが立ち上がり、新たにソースラーメンを提供する店もできた。 (写真:汁麺ながら構成する食材は明らかにやきそばのもの) 明らかに汁麺のスタイルをとる店がある一方、やきそばから派生したと思われる店もある。古株の店では、キャベツが入っていたり、紅ショウガが添えられていたり、やきそばがつゆだくになってソースラーメンに進化したと思われるものが多い。やはりやきそばをルーツに誕生したと見るのが妥当だろう。 (写真:黒石では焼き置いたやきそばを新聞紙やビニール袋でくるんで量り売りしていた) 明らかにやきそばをルーツにした汁麺は、他にもいくつかある。代表的なのは、青森県黒石市のつゆやきそばだ。黒石では、太平麺を使った「黒石やきそば」が市民に愛されており、それに和風のつゆをかけて食べるつゆやきそばも人気だ。個性的で、市民団体がつゆやきそばを旗印にB−1グランプリに出展したこともあり、全国的知名度は、つゆやきそばの方が勝っている。 (写真:やきそばに和風のだしをかけて食べる) 黒石には、作り置きしたやきそばを量り売りする習慣があり、冷えて残ったやきそばを食べやすくするためにつゆをかけるようになったという。正確にいうと、つゆは和風のしょうゆ味で、ソース味のスープではない。ただ、やきそばのソース味がつゆに移り、独特の風味を醸し出す。 (写真:那須塩原のスープ入り焼きそば) 同様にやきそばに汁をかけるのが、那須塩原のスープ入り焼きそばだ。調理法は黒石と同様で、しょうゆ味のスープにやきそばのソースが染み出していく。 (写真:横手やきそばを食べ終えると…) 一方で、船橋ソースラーメンのようにつゆだくになったやきそばも各地にある。日本三大やきそばのひとつに数えられる横手やきそばも、だしを加えたり、好みでソースをあとがけしたりするため、つゆだくになりやすい。地元の人は「えっ、そんなに!」と驚くほどソースをあとがけしたりする。 (写真:「成駒屋」の焼きそば) 同様に山梨県北杜市にもつゆだくのやきそばが存在する。市内の「成駒屋」はメニュー名こそ「名代 焼きそば」だが、皿には、麺の上からでもはっきりとわかる、スープと呼んでいいほど大量のソースが浮いている。 (写真:伊那のスープローメン ソースをたっぷりあとがけ) 隣県・長野の伊那市にあるローメンは焼きそばタイプとスープ麺タイプの2種類ある。ソースの他ごま油など、自分好みに調味してから食べるのが一般的で、ソースは必須の調味料の一つ。その意味では、ソースラーメンに近い味わいといえる。